マーチャーシュ・コルウィヌス生誕581年を記念して制作した個人誌(小説)です。
こういう本を作りました
こういうお話です
1457年3月、フニャディ家の居城テメシュヴァールに驚愕の知らせが届く。周囲の制止を振り切ってブダに向かったこの城の若きあるじラースローと弟のマーチャーシュが、謀反の咎で処刑されたというのだ。城内が騒然とするなか、一人のみすぼらしい姿の少年が現れて人々を驚かせる。それもそのはず、みずからを旅芸人の道化師ガーボルと名乗り、粗野な言葉遣いをするその少年の容貌は、処刑されたはずのマーチャーシュと瓜二つだった。
息子たちの死の衝撃からか、道化師を称する少年をマーチャーシュと信じ込むエルジェーベト。彼女の後押しもあり、〈影武者ガーボル〉はエルジェーベトの兄ミハーイが率いる反乱の旗印となる。けれども〈影武者ガーボル〉の胸の内にはとある決意と計画があったのだった。
こういうコンセプトで執筆しました
- 「立場の異なる瓜二つの容貌の持ち主の入れ替わり」モチーフを用い、民話に伝わるマーチャーシュ王と道化師の活躍の逸話をもとにした、少年たちがそれぞれの大切なものの存在に気づき、勇気を出して一歩踏み出す姿を表現する。
- 入れ替わりによってそれまでの自分と異なる環境に身を置き、少年たちが自分の新たな側面・可能性に気づく姿を描く。
感想・反省点など
- 前作よりも短いストーリーということもあり、より引き締まった内容のものが書けた。ただ時間とページ数の制約がなければもう少し膨らませたかったシーンもある。ガーボルとの友情を通じて、等身大の少年としてのマーチャーシュを表現できたことはよかった。
- エルジェーベトが本物のマーチャーシュを看破した要因、という部分は特に気に入っている。
- ガーボルはほぼオリジナルのキャラクターだが、実在の登場人物たちのお株を奪うことなく、それでいて主人公の片割れとしての葛藤と成長を見せられたと思う。
- 終盤、構成上のミスに気づかないまま入稿してしまい、差し替えの依頼をしたために印刷所に手間を取らせてしまった。また、前作よりもページ数が少ないにもかかわらず同じ厚さのカバー・オビ用紙を使ったため、本を開くときに少し硬くて開きにくくなってしまったことは反省点。